日本オラクル伝

未来がほしかった。未来に向かっていく会社こそが、結果的に生き延びると思ったからだ(同書p.162)

成功するベンチャーの共通項はこの気持ちだと思う。未来を変えたくて戦うという姿勢が成功する企業に求められる。そして、大きくなったときに、大きい会社に勤めたくて入る輩が増えるか、会社を大きくしたり成功に向かって働きたいやつが増えるかが、分かれ道になる。

で、同書は、MSの最後の好敵手とも言われるオラクルの日本法人の戦いの記録。
僕自身は、オラクルマスターとか資格はないけど、オラクルの書籍を書いたり、オラクルユーザーの技術課題のコンサルをさせていただいたりと、ひと稼ぎさせていただいた会社であることは確か。

で、同書は、この分かれ道の先は書いていない。というか、その前に書いた本なので、著者はあとがきに、続オラクル伝を書けたら、という希望を述べているものの残念ながらその希望を果たせるような雰囲気の会社という感じはしない。この10年で普通の会社になってしまったような気がする。ちなみに、製品自体は今のもののほうが昔のものより断然いい。僕らのころは、「オラクルってのは『おら狂う』の意味だぜ」なんていってものだ。それでも、昔よりはずいぶんよくなったといわれた8i。9、10と上がっていくにつれ、製品は間違えなく優れたものになった。
にもかかわらず、ひところの活気はない。倒産するほどひどい会社ではないけど、本書を読むと、栄枯盛衰、という言葉が去来する。

余談だが、このころの社長の佐野氏は夕張の隣町の方。最近は起業家支援なんぞしているようだけど、いっそのこと、近隣町村合併後の夕張市長でも目指してくれたらどんなもんだろう。活気だけはかなり出てくる気がする。