プロジェクトX 挑戦者たち〈1〉執念の逆転劇

うーん。映像で見てたら気にならないんだろうけど、活字になったら冷静に検証できちゃうんで、何だかなぁという感じ。

富士のレーダーと青函トンネルは100歩譲って自然が相手だからいいとして、特にVHSの話は、そんなに崇拝するサクセスストーリなのかねぇ。別にこの本だけじゃなくていろいろ読んで考えてみても、この話しはどどのつまり、先見性と管理能力のない無能な経営陣と、無責任な中間管理職の希望的観測での暴走に、偶然の神風が吹いて助かっただけという、日本によくあるダメダメ組織の話でしかないように思える。
大体、あの状況下で次はVTRだって見えてこない経営陣も無能だし、会社の状況も規模もろくすっぽ考えないでカンパニー制(独立採算)導入して、経営傾けて先行投資できなくした経営陣も無能なら、会社倒産の責任を取らないのをいいことに、売れる当てもなく製品を製造を漫然と続けた無責任中間管理職もどうかと思う。
仮に作るにせよ、下請けと付き合いを続けるにせよ、自分の命を懸けてやっているとは思えない。少なくとも、無限責任で仕事をやっていく社長さんやSOHO連中には納得いかない適当ぶりだろう。
で、そんな暴走をきちんと止めてこなかった、経営陣はやっぱり無能。
そこで偶然、VTRに関する風が吹いてうまくいったからって、威張る話でもなければ、感心する話でもない。この手の無責任をやって神風が吹かなかったツケの数々が、今の日本社会の負債であり、失われた10年の正体だ。
全編を通してそういうところが透けて見えて、TVで見たときの感動は全くなく怒りさえ覚えるんだけど....。