虚像の砦(再読)
人に笑いを届けてホッとさせるのもテレビ。こうして今何が起きているのかを、現場から伝えるのもテレビ。どっちも、テレビの存在意義として、俺たちが忘れてはならない事だ。(P.316)
震災後の読書としては非常に考えさせられる一冊でした。メディアとは何かを突きつけられているこの瞬間に、ついつい、ネットメディアvsマスメディアとか単純な二項対立で論じてしまうけど、どちらのメディアも事実の中にもがく人がいてそれを情報に変換する人にそれを広める人がいるわけです。それはみんなそれぞれの立場があって、生活がある。そしてマスメディア人の仕事は過酷。
時間も季節感覚も失っていく仕事。テレビは市民の代表と豪語しながら、俺たちは普通の生活からどんどん遠ざかっている......。(P.51)
それをグリッと抉り出している小説です。自分がその業界に少しでもいたことがあるんで、この臨場感は尋常ではありません。改めて読み直しても、やはり多くの人が一度は読んで見るべき一冊ではあります。フィクションであったとしても。
「『我々の仕事は、影や闇に光を当てることだ。その闇の中にあるものが何かは、問題じゃない。大切なのは、闇をそのままに捨て置かないことだ』。その言葉、今こそ噛み締めるべきときではないでしょうか」(P.19)
俺にはこの事件の本質が理解できているのだろうか。/そして伝えるべきニュースを、正しく伝えているのだろうか......。(P.171)
「俺たちジャーナリストは、おいしい情報ときれいな女には弱いんだ」(P.349)
俺たちは今、我が身の驕りのツケを払わされているだけなのかも知れない。(P.426)
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