粗にして野だが卑ではない―石田礼助の生涯

「おまえ、ズケズケ言うけど、外へ行くと、おれ少しはえらいんだぞ」(P.126、息子の嫁に)

いっつも、こう思って生活しておりますが、こんなに偉い人にこういわれちゃうと僕程度の小物は家族のものに何を言われても、温和にすごせないとだめですな。
三井物産を社長になるまで勤め上げ、その後、国鉄総裁になった石田礼助の生涯。こんな人が親の職場のトップだったのねと思うと多少なりとも感慨を持って読める。
でも、労組ってどこで狂っちゃったんだろうな。

「組合は生活権こそ問題にすべきであって、トップの生活が気にくわぬから辞めろなどとは筋ちがいだ」(P.109、森泰助労組幹部)

こんな筋違いは普通に横行しているもんな。でも、石田の頃はそうではなかったってことだよね。単純に、昔はよかったという気はないけれど、こういういけしゃあしゃあと生きる人間になってみたいな。そういう意味では、こういうせりふを自分の行動と矛盾していてもはける人間なんだと思う。
薄い本だけど、読んで損しない感じの一冊。

「男気なんて、めったに出すものじゃない」(P.60、他店の窮状を救うも理解されず閑職に回され)