ソフィーの世界―哲学者からの不思議な手紙

「あの時、きみに哲学の本を書こうと決めたんだ。クリスティアンサンの大きな本屋に行っても、図書館に行っても、若い人にぴったりの本がなかったんでね」(P.655)

秀逸な哲学解説書です。ネタばれギリギリで言うと、このセリフがこの本の最大の本質なのではないかと。でもやっぱりどこかで神の視点という、神話を保持している議論のように思います。とはいえ、そういうことも含め、この小説体験がちゃんと哲学史体験になるようにできています。ぶっちゃけオモロイです。

「でも、こういう問いを立てるってことだって、わたしたちはまるっきり勉強してこなかったのよ」(P.244)

なんてセリフを言わせることで、問いを構築できない現代人へ哲学という問いを立てる技術を上手に紹介しています。

ソフィーは、世界をわかりきったものだと思っている人の仲間ではないよね?(P.28)

その前提はこの発想で、この発想を持つと世界のあらゆることに対して

どうしてなにもかも、こんなにめんどうくさいの?(P.71)

と思えます。それにしても、カントを鬼門とする僕としては、この一刀両断が一番学びになりました。

「『ものそのもの』と『わたしたちにとってのもの』を区別したってことだよ。カントが哲学のためにやってくれた大きな仕事だ」(P.417)

とにかく、「中高生は一読せよ」言いたい一冊であります。