三国志

志は、あるのか。欲望ではなく、志と呼べるものはあるのか。それがあってなお、怨念の言葉を、上にむかって吐き出すことができるのか。あるのは、ただ詰めこみ続けた知識と、世に出られないという思いだけではないのか。(6P.96、諸葛亮)

いつも土と語った。これが、自分に与えられた生なのか。自分はなぜ、世に受け入れられることがないのか。なんのために、万巻に及ぶ書を読んだのか。なんのために、いつも考えてばかりいるのか。土は、生きる場ではなく、嘆きの捨て場だった。そして嘆きは、尽きることはなかった。(12P.263、諸葛亮の回想)

色々三国志の小説は読みましたが、やはり、この北方三国志は秀逸だなぁと思います。その時々の自分と、その時々の登場人物のありようを思わず重ね合わせて、ちょっと思索してしまいます。一人一人の登場人物がリアリティを持っていて魅力的に書かれていることが、素晴らしいと思います。とくに、呂布に人気が集まっているようですが、個人的にはこの活躍の場がなく思い悩む諸葛亮に個人的には惹かれます。
いまの自分の悩み方に近いものがあるというだけのことかもしれませんけど。

長大なので、いちいち局面解説をしているときりがないので、いまの自分として抜書きして残しておきたいものを以下に残しておくおいて読了。多分、この抜書きを足してその数で割ったらいまの自分になりそう。

「言われた額より少なかったら、俺は怒る。言われた額を貰ったのなら、多くても少なくても、引き受けたということだ」(1P.12、関羽)

「流浪をはじめた時は、一軍の大将にという気持ちも持っていました。なれはしない、と分かるための三年だったような気もします」(2P.187、趙雲)

自分がどこかの戦場で果てたとして、心の中では生き続けている、と言ってくれる人間が何人いるのか。(3P.265、曹操)

「志を、抱いた。傲慢なようだが、この国ために、民のために、志を抱いた。死すとも、私はそれを捨てぬ」(6P.111、劉備)

「強い男になれ。強い男というのは、自分を知っている。決して、無理なことはしない。自分を大きく見せたりもしない」(6P.225、周瑜、子供に)

「非凡だということは、孤独だということだ。私の麾下に加わってくれたおまえに、孤独な生涯を送らせたくはない。凡人を理解できる非凡さを、おまえは持つことができるはずだ」(7P.145、劉備、諸葛亮に)

「頂点に立った人間は、勝手にそこから降りることは許されません」(8P.289、牛志、馬超に)

「なにもかもがどうでもいい、という気持ちが強いな。面白そうだと思っていることは、やってもいい」(9P.211、馬超)

「酒を対にしては当に歌うべし。人生、幾何ぞ。譬えば朝の露の如し。去りゆく日の苦しくも多き」(9P.295、曹操)

「汚れずに生きようとすると、滅びるしかありません」(11P.123、牛志)

「すぐれた点に自覚を持っているより、欠点を自覚している方が、これもまた上と言える」(12P.34、諸葛亮、馬謖に)