最後の御大将 平重衡(しげひら) 義経が最も恐れた男
「堂塔伽藍や仏像は形あるもの。焼け失せたなら、造り直せばすむことじゃ。まことの仏敵とはどのようなものか、教えてつかわそう。頭を丸め、僧徒の姿をしておっても、御仏の教えも守らず、倣岸無知な生きざまを晒している、うぬらのような外道の似非坊主のことを申すのだ」(P.474)
一応、重衡が主人公ということになっておりますが、内容的には平家物語そのもののリライト版という感じ。歴史小説というにはちょっと弱いかな。まぁ、清盛が少しましな扱いになっているので、より常識的な理解で書き直せていると思います。
「船が沈むほどに逆風が強まるならば、死に物狂いで生き残る方途を探らねばならん。そのときは、たとえ悪鬼、羅刹と呼ばれようとも、わしはやるべきことをやる。其許も、肝に銘じておくがいい。」(P.274、清盛が重衡に)
新解釈という感じもないし、別の資料からの挿入的な要素も無いので、読みやすいといえば大変読みやすい感じです。でも、ちょっと物足りないなぁ。武の部分をもっと強調した書きようになっていると、タイトルに近づいてなんともいいかとは思うんだけど。
平家物語そのものを読むのはちょっとしんどい人向けです。
「其許のように武術の鍛錬ばかりしておっても、いざというときに心の底から勇気は湧いてこぬぞ。愛しい女性や子らがおればこそ、こ奴らを守るのだという強い信念が湧いてくるのよ」(P.184、知盛が重衡に)
「人は、みな天意に従って生きておるのです。生きるも、死ぬも天意―」(P.313、徳子が重衡に)
「わが一門は、もはや一度たりとも敗れることは許されません。しかし、勝ち抜いていけば、きっと先行きは開けます」(P.315)