ほっかいどう百年物語―北海道の歴史を刻んだ人々

「少年よ、大志を抱け。それは、金銭や欲のためではなく、また、人よんで名声というむなしいもののためであってはならない。人間として当然そなえていなければならぬ、あらゆることを成し遂げるための大志を持て」(P.79、クラーク)

まぁ、母校の有名人の名句なのでこの辺から引用すべきかと。
表題どおりの本。この100年で北海道を作った人を紹介するラジオ番組を編集したもの。続編とか続々編とかあるんだけど、とりあえず、自分で保有してるのはこれだけ。
個人的に好きなのは

帯広の開拓へ邁進する晩成社のの主要人物の渡辺さんを支えたカネさんの
「私は弱いものいじめをする日本人が嫌いなんです(中略)。強いものには卑屈に媚びる、しかし影に回ると大勢で卑怯なことを平気でする。そんな人間にはなりたくありません」(P.138、渡辺カネ)
本当に、そう思う。で、内地に来たらそういう輩が少なからずいるのに驚いた。北海道にもいるけど、なんか出で行きたくなる気持ちがわかる。

商売をしているものとしては、やはり丸井さんの今井さん
「金というのは、たとえ商売で儲かった金でも、実は天からいっとき預かった金である。金の使い方は、無駄を避け、世のため人のため、立派にお役に立つ使い方をしなければならない」(P.165、今井藤七)
こういうお金の感覚を身に着けねばと。

親が鉄道員だったので、この辺は大いに首肯してしまいます。
「ばかたれ、決まってるじゃないか。お前らだ。お前らは鉄道員じゃないか。他に誰が汽車を動かせるんだ。汽車はお前らが動かそうと思えばいつでも動くのさ」(P.322、菊池トメ、終戦で狼狽する若手鉄道員に)
でも、鉄道に限らず使命感で働くということと自分の手にあるものを考えたときに、これは普通のことかもしれません。

お酒に関しても

「ビール工場を造ることによって、様々な関連施設や交通、輸送手段の整備が必要となる。それを推し進めるのが開拓史なのだ。あえて困難な道を選ぶことでこそ、北海道にはずみがつくというものだ」(P.41、村橋久成)

「儲けようと思うと良い酒はできない」(P.262、竹鶴政孝)

サッポロビールにニッカというまったく出自の違うものなんだけど、どちらも使命感でいい仕事をして北海道を形作ってきたんだと思う。
ちなみに、僕が子育てSOHOをやろうと思ったきっかけの施設を作った人も出ていたりする。

彼女が残した美深育成園に現在60名の児童が暮らしています。その年齢は2歳から18歳。道北における数少ない養護施設として、カツのうちたてた人の和を第一とした教育方針のもと、活動を続けています。(P.271、松浦カツ)

その60人の中の数名は明らかに僕にそういう力をくれた人だと思います。メモの抜書きをしていると終わらない感じがします。最後にこのマインドは北海道の人にもう一度もってもらいたいかな。

「開墾の始めは豚と一つ鍋」(P.132、依田勉三)
「雪は作物を豊かにする。雪の下には未来がある」(P.82、ケプロン)


以下、残ったメモ。もったいないので残しておきます。

「運はこちらに向かず、志ならずといえども、今日までの我々の行いは必ずしも無駄ではない。きっとや明日の日本国のために活かされるに違いない。いや、活かさなければ、悲運にもこの蝦夷地の土となった大勢の仲間たちにあわせる顔がありません」(P.14、榎本武揚)
「人が人を知らずして、なんで人の道がまっとうできましょうか。」(P.17、松浦武四郎)
「私が日本に伝えるのはアメリカの進んだ技術ではありません。技術を生み出すのは人間です。人間が自然と共に生きていく中から技術が生まれ、機械が発明されました。大切なのは自然と共に生きようとする精神、スピリットです」(P.74、クラーク)
「人物さえ高尚ならば、たとえ学問がなくとも恥ずるに足らず、成績にとらわれることなかれ」(P.93、新渡戸稲造)
「我、流刑に処せられた囚徒を北海道に移さるるは、この地を開墾して万代不尽の富となして国益を起こす。もって、囚徒を開墾作業に就かせること外ならず」(P.110、月形潔)
昭和50年代、全国でも稀な刑務所の誘致運動を起こしました。(P.114、月形潔)
「文明開化を唱えながら、おまえら北海道という宝の山に気付かないのか」(P.126、依田勉三)
「道路は単に人や馬の通行の安全だけではなく、愉快に楽しく通るものだ。人と人が触れ合ったり、何かを学び取る場所なのだ」(P.157、丹羽五郎)
「あなたは農業教育をなくして開拓ができると本当に考えていらっしゃるのですか?」(P.172、佐藤昌介)
「私たちのユーカラのどこに、そんな値打があるのですか」(P.218、知里幸恵)
「北海道の農業を救う道は酪農以外にはありません。酪農家が搾った牛乳で、組合がバターを作るのです。どうかこのバターを買っていただきたい」(P.249、黒沢酉蔵)
「児童憲章を持つ国であり、文化国家として復興しようとしている日本で、なぜ人一人の食費が犬より安いのだろう」(P.267、松浦カツ)
「結局、どういう作品が生まれるかは、どういう生き方をするかにかかってくる(中略)。どう生きるかとどう描くかの、終わりのないいたちごっこが、私の生活の骨組みなのだ」(P.295、神田日勝つ)
「汽車を停めたらお客が困るよ。汽車は動いて始めて汽車だ。汽車を停めるなんてとんでもないよ」(P.325、菊池トメ)