レポート・小論文・卒論の書き方

レポート作成の現実の段階は、原稿用紙のマス目を一つ一つ埋めていく、ということからはじまります。(P.100)
考えてみますと、物を書くということは、なんと原始的なことでしょうか。近代的オートメーション工場で、物品が流れるがごとく作られていく時代だというのに、マスの一つづつを一文字一文字で埋めていくわけです。まさに手工業です。裏長屋のおかみさんの封筒張りや、造花づくりといっしょです。(P.125)

そうはいってもですね、さすがに進歩しましたよ。今や、ネットで検索してワードで書く時代です。ヒトマスづつ埋めるようなやからは減りました。コピペで一気に文章を激しく継ぎ接ぎです。もはや文章ではないものになっています。まぁ、工業製品もコストと自動化を追い求めると一般には品質が低下するように、レポートも品質は一気に低下しております。
文字通りの本です。大学生必読書として長くロングセラーとして活躍しております。

さて、

あなた方は学問的に成熟していないのですから、胸を張って先学の学説を取り入れるべきです。むしろ、その取り入れ方が、あなたの業績になるのです。(P.117)

と言っているので、一見コピペを推奨しているようでありますが、最近のコピペはランダムに無秩序に行なわれているので、

表現のあやしい全天下の諸君に訴えたいのです。あなたがたは、自分の表現に満足せず、正確で、しかも読む人にまったくだと納得させる文を書くための努力をして欲しいのです。(P.159)

という感じです。訴えるべき人間はたくさんいるので途方にくれます。

六五〇枚の卒論を上・下二巻にきれいに製本して提出したのを、ああ、これを読まなければならないのか、とため息まじりに受け取った思い出があります。(P.195)

こんなのでため息をしていてはいけません。おそらくそれは文章になっていますが、件のコピペ系論文で100枚も読んだら、疲れるどころか気が狂います。本当にコピペする前にその文章を

若い諸君は、必要あって購入した以上は、時間の許す限りとことんまで一冊を読了してほしいのです。(P.35)

として欲しいところです。その上でこういう話ができるのですけど、それ以前ばかりで悲しくなります。まぁ、僕の文章も威張れたもんじゃないけど。

私は、レポートは、なんでも明快に結論がでるものでなくてはならない、という考え方には賛成しません。(P.24)
"芸事は思案の外だ"(P.57、芸人の知恵)
いちばん大切なのは"ことば"だ、このことばの使命を忘れている(P.153,小林秀雄「考えるヒント」より現代の作家批評)