夏草の賦

元親殿はたいそうな器量人であるとききます。とすればきっとおもしろい人生がすごせましょう(上P.25)

これを読むと、なぜだか自分の妻を思い出します。一緒に住んでいる相手を捕まえて、思い出すと言うのも変な話ですが。美濃から、土佐まで面白そうだからで相手を選んで乗り込んでしまうってのは、ある面で、北のはずれの変な生物を面白そうだからと飼ってみようっていうメンタリティと同じなのでしょう。
キャラ的には随所に相似性が発揮されていて、とても他人とは思えません。で、まぁ、自分と元親が似ているのかと言われると、小心者ぶりが似ているようなきがします。

権謀をめぐらすときには碁打ちが碁に熱中するように熱中しているが、その謀の結果があらわれるころになると、あとは数日、酒をのんでも悪酔いし、ひどく陰気な男になってしまう。(上P.195)

とか

「おれが酒に痴れ、女に痴れるようなただそれだけの男に生まれておれば(中略)土佐の者は幸いだったろう。人は死なず、それほどの苦労もせずにすんだ。いささかの志を持ったがために、かれらの死屍はるいるいと野に満ちている」(下P.132)

この辺のものの考え方は自分的には自分に似ているような気もします。とはいえですね

「大将というものは、ほうびをあたえる者をいうのだ」(下P.114)

といわれたときに、大将の資格はないかなと思います。褒美は貰うばかりです。おまけに

「目的のために悪徳が必要であるとすれば、悪徳も大いに使わねばならぬ」(上P.269)

これは出来なかったりします。ただの小物だな。もう少し人生頑張るべか。大将の妻に相応しい人間と一緒におるのにただの小物で終わるわけにもいかなそうだし。

土佐は流人でもいやがる大田舎かもしれないが、外国人が見た場合は逆であった。(上P.44)
「おれは天下六十余州を庭に酒を飲んでみたい。武士もあきんども、国々を自由にゆききできる世をつくりたい」(上P.189)
「若さはかならずしも尊くはない」(下P.58)
「それが世代なのだ」(下P.100)
悲痛と滑稽のない者は英雄とはいえない(下P.140)
男を成り立たせているのは夢と志なのだろう(下P.213)
「男は、夢のあるうちが花だな」(下P.309)