沙霧秘話

「詩人がいうほど運命はロマンではない。運命は曲者だ」(P.99)

SFです。誰がなんというとこれはSFです。変な話、SFとしては非常に面白い作品だと思います。
全6冊の入り組んだ人間関係図に頭がこんがらがったひとにしてみれば、非常にシンプルな沙霧の重ねあわせの波動関数みたいな状態が引き起こす出来事とその話の進展は非常に面白いものがあります。
それにしても、冊を追うごとに短くなってページ数が少なくなる佐々木丸美作品。だんだん不親切な作品になっているよなぁ。まぁ、本作はページ数が少なくても話し自体もそのページ数でちょうどいい感じでサクッと読めるのでいいかと思います。

「働く汗の熱さも知らないで何が社会主義だ」(P.57)
「余りある青春の力を、くだらぬ慣行を守ることで消耗させられるのはまっ平ごめんです」(P.105)
軍国主義は恐怖だけど、他人に扇動される無知の思想はより恐怖である。(P.110)
胎教によろしい、愚か者に立腹することは。(P.123)
「書くことと漁の仕事は別だと考えていたことを恥じました。生活に漬かります。それでも筆を執る意欲があれば書き、失えばそれまでのことだと諦めます。これがあるから書けないというのではなく、それでも書けるのならば、と自分を律します」(P.131)