夢館

「私たちの年齢になれば仕事が唯一の自己顕示だ。足もとがぐらついては人生そのものがぐらつく」(P.183)

うん。ほんとうにそうだ。何が仕事だかよくわからない生き方をしているけれど、やっぱり自分の才能を仕事で活かすしか、自分というものが社会に対して存在しているということを示すすべはない。社会でなく子どもなら遊びでもいいんだろうけど。仕事の才能に関してはたぶん十分にあるしこれ以上開花しないように思う、そうなると

天から与えられた剣は正義のために振りおろすがよい、そうしたならばおのずと運が開けるだろう。(P.118)

ということなんだろうけど、正義がよくわからんのよね。だから道が開けていないのでこんな感じの人生なような気もする。
さて、多分これで雪の断章から続く長い長い話そのものの終わりかと思う。この後も2編出ているけれど、ストーリーとして内容がしっかりしているのはここまでのように思う。
内容的には、水に描かれた館の外から来た鑑定人どものアナザースト-リー。で、この期に及んで、雪の断章と話が繋がっていくわけだ。この辺はちょっと強引。切り離した話のままでも良かったように思う。
このせいで、内容を理解しようと思うと、館シリーズのほかに雪の断章シリーズも買う必要があったりする。
でも、だんだんストーリーそのものより、説教が前面。まぁ、いいとは思うけど。そんなに変な理屈ではないし、生きていく上でそうだなと思うし。とりあえず、メモは手付かずってことで。

お互いを尊重してしゃしゃり出ない。暗黙の決まりが共同生活運行の潤滑油だった。(P.14)
「えらい人はまわりの悪口や意地悪を気にしない賢い人。賢い人は、いばらない、いじめない、ひがまない人のことだ」(P.48)
自分には創れないものをこわしてしまったのだから謝るのが先だろう(P.74)
人間は根本的に自分に正直だということを認識しなくてはなりません。(P.95)
学者が学問を奪りあげられたら抜けがらだ、学者の意地を通すがいい(P.107)
それらをきちんとわきまえて、ドライに生きなければあなたの一生が台なしですよ。(P.115)
「三人よれば姦しいというが本当だな」(P.135)
「他人に起きる事なら資料として客観的に判断できる。しかし自分自身の体験は驚嘆が先行して冷静な推理が鈍る」(P.156)
私に他人を愛し赦してやれる余裕があるのだろうか。感情は理性を置いて勝手に走る。(P.162)
人の気持ちはいくら分けても減らないものだ。(P.186)
妬きもちおばさんと嫌いながらも結局頼ってきたのだ。これが一つところに住む絆のおもしろさだ。(P.234)