崖の館
出さなくても教養はにじみでて人となりをきちんと示す。そしてまわりの人々を魅了する。(P.81)
自分はそういう意味では修業はなっておりません。
雪の断章シリーズからひと段落して、違う舞台設定のお話。とはいってもこの間ではなく続編を辿っていくと最後にまた繋がっちゃうんだけど。トリックの作りこみとか、かなり変なので細かなことを突っ込むと話が崩壊するかもしれません。でも、素直に佐々木丸美ワールドに乗っかって読むと楽しめるかと。
設定は、雪の断章シリーズよりは暗くない。金持ちマダムに普通の家庭に育つ6人の甥と姪が繰り広げる話。ただ、夏休みとか冬休みの期間限定の密室化した館の中の出来事をひたすらおう形。
視点は末の姪のちょっとぽわんとした涼子ちゃんのもの。今までの、主人公たちの強烈な不幸中心主義の視点とは違ってまた不思議な感じではある。
お話に抵触するものは実際に読んで楽しんでもらうとして、気になったことをメモで残す。
たくさんの人に通りすがりに観られるより一人にとことん愛されて暮らす方が絵は絵としての使命を全うする(P.19)
便利なものを使うのに形式とか見栄なんて考えていられるものかい(P.25)
「直感に響かないものは時間を置けばますます駄目だ」(P.39)
「腹の中で何を考えようと気にならない者には気にならない。たて結びであろうとなかろうと大勢に影響はないから。そして口にしても影響の無いときは言わないのと同じ効果を持つ」(P.51)
瞬時の名誉欲は全生涯に匹敵するのだ。誉を求める人の心とはそのような愚かなもの。(P.165)
生きるからには浮世のしきたりを守らねば。(P.208)
「とり戻せないことは口にするな」(P.227)
美味しい朝ご飯だった。おいしいということは心が安定した証であり幸福であること。(P.249)