忘れな草

「人間どうあがいても天から受けた仕事をまっとうするまでは死ねない。」(P.290)

僕自身は結構そう思うようになりました。じゃなかったらとっくに死んでるだろうという出来事多数です。
問題は、天から受けた仕事がなんなのかが分からないところなんだろうなと思う。これと思った仕事が次々手元からすり抜けていくし、ひょっとかすると違うなと思っていて流してしまった中にそれがあったのかもしれないしと。
雪の断章の続編です。読んでから読まないと、たぶん話が見えない部分が多いと思われます。その上、その話の接続点はかなりご都合主義的で、佐々木丸美の思想を書くために無理くりつくった話ともとれなくもありません。
とはいえ、人の生き方の小説としては雪の断章同様、それ相応にひきつけられるものがあります。
この歳になっても反省することしきりです。
仕事の上では

忍耐ほどその人の底力を感じさせるものはない。(P.94)

なんかはまさに、反省すべき事件だらけです。底力無しってことでもあります。人を使う仕事になるのであれば、

「上からながめても人の心は読めません」/「それでいい。指導者の仕事は人の心を読もうとする真摯な構えです」(P.297)
人間は下から見あげた方がはっきり見えるし、ほぼ核心を衝くものです(P.219)
立場を利用してせせら笑うのは卑怯だ、大人が幼児の主張を小バカにするよりももっと愚劣だ。(P.131)
善人だからと気を許してはいけない、善人には善人の礼をつくしてこそ(P.74)
努力家というのは敵にせよ味方にせよ大きな石、一人ではとても動かせない。(P.120)

なんかはよく認識し気をつけるべきことか。一匹狼をしているとこういうしくじりをされることがあっても、することは少ない。
私生活では

「信じるということは責任転嫁ではない、思い通りにならなくても黙って受けとめられる捨て身の覚悟だ。」(P.100)

ということがいかに大事か。自分の家族ですら10年経っても捨て身の覚悟がつかない。

家族にしろ共同生活にしろ長もちさせるためには、それぞれの孤独を守ること。(P.19)
「憎み合った心のアザは一生消えない。」(P.23)

その覚悟がつかないと後が怖い。あとは10年で得た納得。

今日の教育はひとつだけ忘れものをしている、学ぶという高貴な精神を、学ばなければならないという鎖に変えてしまった。(P.81)

こうならないためにどうするかだよな。せめて自分の子どもだけでも、高貴な精神で学んで欲しい。

「人間どんなに力んでみても、結局人のからみ合いで人生苦を負うのだ、善行も悪行ももちつもたれつなのだ。」(P.154)

どどのつまり、どうあがいても死ねないのだから、こういうことだろう。

どんな小さなことでもいい、幸せだ、と思ったら素直に喜べ。(P.258)