銀の砂時計

「こんなのない、こんなのない、ないないない、ないよう、やだよう、いやだよう......」(P.91、ふしぎな公園)

子供の叫びを子供の視線で、素直に書いている童話作家だなぁと、改めて読んで思う。
それは暗いとか明るいとかではない。子供にとって、世の中のありようというのが素直におかしいところがあるということだ。その結末がどうということではないし、こうでなければいけないというメッセージがあるわけではないと思う。

「でも、世の中ってそういうものかもしれませんよ」/ときりぎりすは、ためいきをつきながらいいました。(P.40、秋のちょう)

この諦観しているキリギリスも

(人間って、おかしいな。おにはわるいって、きめているんだから。おににも、いろいろあるのにな)(P.79、おにたのぼうし)

疑問を持った鬼の子も、なんというか、なんか変だなぁという子供の気持ちを素直に反映している。これが正義だ。ということを教える童話も大切だけれど、こういう、素直ななんか変だな、を文章にしている童話もきっと大事なんだと思う。当然、僕らが、それに耳を傾けられる大人になることも。

夏のはじめのある朝。/こうして小さな女の子の命が空に消えました。(P.136、ちいちゃんのかげおくり)