和解

自分は麻生の人間全体に不愉快を感じていた。(P.50)

こういう気分の対象が、正直言って今の自分にはあります。それにしても、その不愉快さの盛り上がりっぷりも本当に自分のことを書かれているのではないかと思えるぐらい、上手です。
まさに、百年の誤読でいうところの1960年のフォッサマグナ以前の名作。表現といい内容といい主題といい、文句のつけようのない名作です。
ただ、自分に関して言うと、本作と違って不愉快の対象が血族ではないので、こういうすばらしい「和解」に行き着く自信はないです。ま、仕方がないは仕方がないし、馬鹿げているのは馬鹿げているんでしょうけど。人間の感情ってのは摩訶不思議なもんです。

「然し今まではそれも仕方なかったんです。只、これから先までそれを続けていくのは馬鹿気ていると思うんです」(P.93)