どくとるマンボウ航海記

「ドクターなんぞが上陸した日には、たちまち対日感情が悪くなる」(P.78)

あー、これこれ。これが北杜夫ですよ。
何だかデビュー作とかみてると、えらい暗いけど、こういう軽妙で人を食った感じの文章がやっぱりこの著者の持ち味です。こんなに面白い文章を書くのは彼ぐらいしかいないでしょう。
とくに、細かなベースの知識なんかで、昆虫と登山と医療の経験から来る博識感が、また人を食った感じ。暗い作品にはまるといやみ臭いのに、これがまたいい。
すべてデタラメの文章ではないけど、一部デタラメぐらいかな。豚には食われない程度に笑っておきます。

私のことをすべてデタラメな男と思う者があったら豚に食われるであろう。(P.16)