藤村詩抄
なさけは説くとも/なさけをしらぬ(P.83、月夜)
おもわず、この一節を呼んだときに「悪かったな俺のことだよ。藤村」と、一人突っ込みをしてしまった。
藤村が自分で選んだ自分の詩のダイジェスト。
まだあげ初めし前髪の/林檎のもとにみえしとき/前にさしたる花櫛の/花ある君と思ひけり(P.57 初恋)
ま、この詩が多分教科書に入っていて有名。なんでしょうね、いろんな詩集を読んでいて思うのですが、色恋沙汰のものということで言えば、藤村君ぐらいの内容が非常にプラトニック感たっぷりで作数も多く中高生の教科書になるほど採用しやすいわけです。ある意味で、なかなかニーズにあった詩を作って長く残っている点は抜け目はありません。とはいっても、悪い詩という意味ではなく、優れた詩です。声を出して読んで欲しいものです。
いい詩が多かったのですが、中でも特に気に入った一節を最後に。
この道を忘れたまふや/この空を忘れたまふや(P.202、悪夢)