古典落語 圓生集

わたしが栴檀で、お前さんは南緑草だ。(下P.302、百年目)

笑いを軸にさまざまな感情をくすぐるのが大衆演芸の落語だとすれば、まさに、この「百年目」は本当に優れた一席である。番頭と旦那のやり取りで、この許しを与える一場面は落語とは思えぬほどじっと読みほれる(実際の席なら聞きほれる)場面だ。
正直、上下巻に分かれるほどの圓生集。実は、題目数が多くて上下ではなく、一席一席が文字として長いのだ。で、たぶん寄席で聞けば良いのだろうが、活字で読むと前後関係を失いがち。序段のクスグリが長いのだ。
で、微妙なことに役立つ説教調だったりする。でも、くすぐりとしてそれはそれ面白いのだが。

自分の頭の蠅も追えねえくせに、他人の世話どころじゃないッ(上P.95、らくだ)

勘定は少ねえが言うことァ多いや(上P.130、五人廻し)

どうも人間というものは、ちょっとしたことから迷いがございます。(上P.412、木乃伊取り)

のように、役に立つんだけど、全体の話が見えにくい。ま、案外こんなポリシーをもって落語家ってやってるのかもしれない。

なんでも落語は聞かなくちゃいけませんよ、なんかいいことがあるよ(下P.178、掛取万歳)