心がここまでわかってきた―分子生理学が解明した「知・情・意」
左右の大脳が一致協力して思考すれば、一元論になる。反対に、左右の大脳が相対立して思考すれば、二元論になる。(P.210)
この先生は、こんな本を書いてしまって、自分の晩節を汚してしまうということに気がつかなかったのでしょうか。それとも、退官後の生計のためにやむなく眼をつぶって書いたのでしょうか。もし真剣にこの言説を信じて書いたのであれば、僕のような若造でも、こういいます。
「馬鹿も休み休みに言いなさい」
と。論として一元論か二元論かと、右脳左脳の機能分別は無関係でしょうが。それだけならいざ知らず。
生命はタンパク質の合成で作られ、心はタンパク質の分解で創られる。(P.4)
って、心的プロセスは醗酵過程ですか。腐りものですか。比喩にしても、もっとうまくしなさいな。
アナログ的に作られている人体は、本質的にデジタル的文明にはなじめない。この矛盾からストレスが生まれてくる。(P.63)
この言説に何の論理的つながりも実証的つながりもないでしょ。極めつけはベンゼン教。
炭素原子は(中略)他の分子、原子では不可能なベンゼン環を作れるという特徴をもつ。(P.53)
あのねぇ、炭素原子で作られた六員環分子をベンゼンって呼ぶんだから、他の原子でベンゼン作れないのは当たり前でしょ。まぁ、その辺の寝ぼけ言説は放っておいても、さらにすごいベンゼン教。
ベンゼン環という有機化合物でなければできない特別な化学的性質によって、喜怒哀楽は生まれるのである。(P.81)
「情」もベンゼン環によって創られるのである。(P.120)
何の根拠もないでしょうが。挙句に人類滅亡までベンゼン様の所業らしい。
人間は、ベンゼン環を実に巧みに使って、地球を"制覇"したのである。(P.121)
人間がベンゼン環の利用を少しでも間違えると、恐ろしい事態を引き起こすことになる。(P.121)
「またベンゼン環か」と思われるかもしれないが、しばらくご辛抱いただきたい。(P.100)
余りのばからしさに辛抱して読んでしまった。
あと、看過できないのが
自閉症は、周囲のことにまったく関心がなく、友人との遊びができず、自分の世界に文字どおり自閉してしまう病気である。(P.137)
という、自閉症という病に対する不認識と適当さ。いっぺん、勉強しなおして出直せ。こんな本を書く資格はないと思う。
それにしても、こんな馬鹿本読んで信じる人はいないだろうし、きっとこの先生は、生計やら老後の心配で我慢して書いたに違いない。うん。そう思おう。