楊家将

力のかぎり闘ったあと、酒を酌み交わしたい。男は、それでいいではないか。(P.269)

宋のころの名将で敵国遼でも楊無敵と言われた楊業と七人の子どもたちのお話。
北方歴史小説の中では珍しく、違う作品との因果が薄くて、この上下巻だけでスカッと読めてしまうところが比較的気持ちよい。特に、軍人が主人公で戦のシーンが上手に描かれているので結構のめりこんで読めるところも悪くない。また、敵国遼陣営の人間もまた魅力的に描かれていて、これまた面白い。
そうはいっても、7人の子供たちがそれぞれ個性を持って描かれていてその子どもたちや家族の成長と活躍が見所の一つだ。

「軍人は、ただ戦をすべし、と父上は言われましたが、ほんとうにそれだけでよいのでしょうか?」(上P.54)
「六郎はわからん。七郎はわかりやすい。同じ兄弟でも、こんなものですか、兄上?」/「なんとか、わかってやるのも、兄弟というものだ」(上P.128)
「軍人は勝つことにすべてを賭けよと。そして、勝つことを誇りにせよと」(上P.149)

また宋という国のありようと前線のギャップ。

富んでいることと、無駄なものが多いことは、まるで別のことのはずだ。(P.19)
「あまり、考えたことはありません。私はただ、代州という土地が好きなのです」(P.41)

そんな中で、楊一家は宋のために、そして遼も中原に覇を唱えるべく全力で戦う。

「遼軍第一と言われた将軍が、そこまで誇りを捨てられた。私も、多少の誇りに棘を刺すことで、お受けするべきでしょう」(上P.171)
「気力を奮い起こしなさい。すべての存在をかけて、闘うのです」(P.71)

その戦の結末は、是非とも本書を読んでいただくとして。上下巻に分かれていますが、前に紹介した他作品よりもスピード感があり、一気に読める感じですので是非とも読んでいただきたい。楊家将という生き方を楽しんでください。

「戦で負けぬこと。これが、唯一の誇りなのです」(上P.96)