わらべうた―日本の伝承童謡

私どもの「わらべうた」編著の仕事も、或人に言わしむれば既に二十年余遅きに失したという(P.282)

ぼくは、その或人ではないが、まさにその通りなのだと思う。この本自体は1962年のもの。僕が生まれる10年も前のものなのだが、この本に出ている、わらべうたで、知っているものは、ほとんど関東圏のものだ。教科書で見た「あんた方何処さ」(P.45)、親にうたってもらった記憶のある「坊やはよい子だ」(P.98)、自分でも口ずさんだ「凧凧あがれ」(P.125)、自分の子供も歌える「うさぎうさぎ」(P.133)、「開いた開いた」(P.222)、「とうりゃんせ」(P.228)、「かごめかごめ」(P.242)、「ずいずいずっころばし」(P.260)。

なんと、自分の生まれ育った地域のものも、祖先がいた地域(=今住んでいる地域だったりする)のものも一つも聞いたことが無い。当然、自分の子供にそれらの伝承のすべも無い。うちの親が教育を受けた時代に、教科書やラジオで関東中心の歌ばかり聴かされて育ったために壊滅したのだろう。まさに、この本を20年さかのぼる、1942年。うちの親世代が生まれたころなのだ。

失われたわらべうたが復活することは無い。が、こういう地域郷土を大事にするために、第2のわらべうたのような文化の破壊が行われないように、僕らが目配せしていかなければいけないんだろうなと。