荒井郁之助

北海道の開拓が進んでいないのは、「人知開けずして学問の進歩遠く彼に及ばざる」ため(P.115:緯度の近いヨーロッパの開拓と比較して)

函館戦争で海軍総裁だった人。とはいっても、函館戦争で有名人といえば土方歳三に、直前までその艦隊を率いていたのは榎本武揚なのでなお影が薄い。でも、北海道大学出身者であれば、同学の前進である、開拓使仮学校の初代の学長として名前ぐらいは知っているものである。
小説というよりは、資料をまとめたもので、荒井郁之助の生涯を記述している。彼の功績はかなり大きく、基本的には北海道の適切な地図を書き出したことや、気象関連の実施などなど、函館戦争後、官僚として北海道の開拓を中心に実地で活躍している。その一環で、開拓使仮学校の初代学長格で働いてたのだ。
しかしながら、本書を読んで気が付くのは、現代においてもっとも功績大とすべきは、各種学会の立ち上げなど、学術界の近代化に貢献したことだろう。明治期の富国強兵は、いわば科学技術立国化がベースになければならないということが軽視される中で、その科学技術の基礎をしっかりと日本に植え付ける素晴らしい活躍をしてきた人物なのだ。
科学技術立国日本と言われるが、そんな中で、是非ともその価値を見直したい人物の1人である。