デジタル・エコノミー―ネットワーク化された新しい経済の幕開け
「それは構わないんだ。今年の答えは違うんだから」(P.90:今年も同じ問題じゃないかと学生に言われたアインシュタインの一言)
デジタル時代の新たな経済パラダイムを予測した本。まぁ、アインシュタインじゃなくとも、「デジタル経済はどうなっているか?」という問いを立てれば、毎年違う答えが生まれるに相違ない。でも、この時代の答えで、これまでも多分あっているのは、SOHO化の予測だろう。
人々は、よりチャレンジングな生活を送っていけるよう仕事や家庭生活を自分で管理できる柔軟な契約を望んでいる(P.496)
オフィスは場所ではなくシステムであるということだ。(P.362)
というのは、昨今のSOHOスタイルで働く人々の姿だろう。他方で、本書では、引きこもりという問題はかなり軽視されがちだ。
CD-ROMでサンディエゴ動物園を見た子供には、実際にその動物園に行って生きている動物を見たいという興味が強まってくる。(P.318)
人は起きて、映画を見るため、パンを買うため、そして人に会うために出かける。それが楽しいからだ。(P.396:ビア樽の中の脳の仮説に対して)
などは、この本の言を信じたいが、実際に日本で起こっていることを考えると、事態はそう単純ではなくなっている。そして、労働者の方もいまだに
人には基本的な欲求というものがある。人から好かれたい、必要とされたい、任せてもらいたい。どこの会社でも、ただお金をもらうためだけに働いている者はいない。(P.269)
という風に働けている人は多くない。ただ目的を失い、お金をもらうために働き、より金銭的、福利厚生的な基準でのみ、就職、転職をする現実がある。他方で、
これらのエリートクラスは自分の国が衰退していきそうなことにもきわめて無関心になっている。(P.477)
という傾向はいっそう強くなり、地域という視点の欠けた経済人が出てきつつある。この問題を解決していくことが、現代の私たちの責務ではあるのだろう。それに、この問題そのものはデジタル化が生み出したものではなく、私たち自身の心がけの問題である。
テクノロジーが労働システムを作り出すのではない。人が作り出すのである。(P.501)