ぷれいばっく子育てテレフォン

あの世に行ってエンマ様に「おまえが前世でよかったことは何だったか」と問われたら、「それは子どもと共に暮らした日々であり、子どもから教えられた数々でした」と答えようと思います。(P.201)

死ぬときに、こんな台詞のはける子育てをやりきってみたいものである。
本書は、独身時代に買ったもの。まぁ、仕事で役に立つかなと思って買った。改めて子どもを持ってからはじめて読み返すと、結構面白かった。1985年の内容から1994年ぐらいまでの、著者の子育てに関するエッセイ集(厳密には、エッセイではなくテレフォンサービスで放送したものを活字化したもの)だ。著者は網走の幼稚園の園長。このエッセイが書かれたときに実は網走に住んでいたりもしたので、それはそれで何かの縁なんだろう。で、思ったのが、日本の子どもを取り巻く環境は、まさに失われた20年なんだなと。だって、書いてあることがみんな今でも通用する問題ばかりだから。

みんながこうするから、みんながこうしたいからといった物差しで、子どもを鋳型にはめているとしたら大変です。(P.80)

なんて、今でも自分の周りでよく見聞きする状況だ。重要なのは、親は実は、子どもにとって一番初めに接する教育者だということだ。だからこそ、共育ちとはいえ、しっかり子どものことを見て、教育をしていかなければならない。そのときに、変な見栄やエゴを出してはいけないのだ。だから

教えるということすなわち子どもの欲求や興味をいかに引き出すかが教育の原点である。(P.97:ピアジェの言葉)

という視点で、子どもの行為を良く眺め、

やって見せて、とくと教えて、させてみて、ほめてやらねば人は動かじ(P.79:山本五十六の言葉)

というやり方で、子どもの能力を育ててあげることが肝要なのである。