「科学者の楽園」をつくった男

明治以来の歴史の中で科学技術の振興が叫ばれた時期は、つねに目先の必要性だけが契機になったものであり、一貫した科学を重視した政策はついになかったのである。(P.363)

今をときめく、というかネガティブな話題で持ちきりの理研のお話です。理研という組織の成り立ち等々を紹介しています。戦争がなく、そのまま理研が進歩していたら、日本の科学技術政策のありようも変わっていたんだろうなと。
知材の産業化など、現代でも学びの多い一冊であることは確かです。理研をどうこう思っている方はまず戦前の理研をこれを読んで理解してみることからはじめてはどうでしょうか。

「研究者がなにか買ってくれと申し出たときはできるだけ早く買ってやってくれ。気の乗ったときにすぐにやらせることが研究能率に影響する。ぐずぐずしていると気が抜ける」(P.98)

だが、彼のオニザリンや、やがて巨利を生むことになる合成酒にしても、発明の動機をみれば、つねに大衆のための便益(ベネフィット)であり、けっして利益(プロフィット)ではなかった。利益があったとすれば、結果であるにすぎない。(P.127)

科学の進歩があるかぎり、日本は「持てる国」である。(P.206)

「トンカツでビールが飲みたかったね」(P.333)