救命: 東日本大震災、医師たちの奮闘

自分がその人を助けられなかったことをどう思うか。一生の傷として抱えるか、それともやるだけのことをやったと思えるか。そういうことを常に考えてやらなければいけないし、それだけの責任感を持ってなければなりません。(P.247)

小説家であり医師である海堂氏が監修した、インタビュー集。
確かにマスコミで叩かれるような医師もいるんだろうけど、多くの医師は高いモラルをもって平時にも危機にも立ち向かってくれているんだなぁと。
それを、変な健康煽り系番組に踊らされて、短絡的医療批判を行なったって百害あって一利なしなわけです。大体、医者より自分の方が医療のことわかっているなんてそんなにあるわけないでしょうが。
むしろ彼らのモラルをちゃんと賞賛して、しっかり働いていただいた方が良いに決まっています。そうした関係性が危機の時に地域をすくうんじゃないか、と、実に考えさせられた一冊です。
ちなみに、行政批判的内容が抜書きから消えたのは霞ヶ関からの圧力ではありません。言わずもがなって感じでしたので。

「真のリーダーとは、周囲のみんなに明日を生きる希望を与えることのできる人のことだ」(P.41)

住民避難のための司令塔になるべき組織ですが、今回、オフサイトセンターの面々はいち早く福島に逃げちゃったんです。そういう状況ですからね、日本の安全基準なんてなかったも同然です。(P.94)

被災地での歯科医師としての務めは辛いと思ったことは一度もないけど、苦痛だったのはマスコミの取材です。(P.211)

家族を守る、地域を守る、国を守るという意識がないと、自分は生きていけないと思うんですけどね。(P.212)