アリアドネの弾丸
「昔、この地に桜の木を植えようとした人がいました。だが私は、その苗木を引っこ抜いてしまった。あの時の自分の行為を、私はいまだに責め続けています......(略)時は流れ、その私が因縁の地に、まさに桜の木を植えようとしている。果たしてそれは根付くのでしょうか」(上P.94)
翡翠院桜宮病院の跡地にAiセンターが出来上がる直前のお話。そう、あの場所にはそもそもスリジエセンターが立つ予定で、というのはスリジエセンター1991を読む楽しみが減るので、それ以上詳しくは紹介しません。
なんというか、個人的には初の普通の推理小説なんじゃないかと思える一作でした。Aiセンターに絡んで一つの不信死と一つの殺人事件が起こります。トリックが実にトリックなのです。四天王のうち速水君は北に飛ばされてすっかり出てきませんが、今回は残り3人総出で、そのトリックを暴くために活躍します。
Aiセンターは無事設立できるのか。腹黒タヌキは無事救われるのか。
医療云々を抜きにしても、普通の推理小説として最後の謎解きとそのどんでん返しまで楽しめます。
そうだ沼田、負けるな沼田、お前の言っていることは九割方は間違いだが、そんなことはどうでもいい。とっととその腹黒タヌキをやっつけろ。(上P.64)
「それが現実です。日本は今、死因不明社会なのです。ご理解ください、白鳥技官」(下P.253)