破綻──バイオ企業・林原の真実
これからは、日本のベンチャーや中小企業は決して銀行融資を当てにしてはならない。日本では完成された大企業でないと、十分な融資を受けることがむずかしいからだ。
今後はなお一層、銀行融資の回収は避けられなくなるだろうし、下落を続ける土地と上場株式にしか担保価値を見てもらえない。おまけに経営者は連帯保証からも逃れることができなくなる。
こんな時代にやれることは、この国を離れるか、思い切って会社を閉めるか、あるいは死に物狂いで別の資金確保の方策を見出すことだ。(P.168)
銀行は相も変わらず不動産と上場株式にしか担保価値を認めてこなかった。外国のように知財価値や希少な美術品、信頼性の高い非上場株式、地域貢献度を評価することが一切ない。これらをすっ飛ばして一足飛びに個人保証を強制する。結果として銀行は、産業全般を支えるという基本的役割を放棄し、日本経済の沈滞をもたらしたのではないか。(P.201)
未上場のバイオ企業の雄で、岡山の経済界の一翼を確実に担ってきた歴史あるグローカル企業の破綻を現場にいたナンバーツーが赤裸々に語ったもの。
バイオ企業が、つまらない事からケチを付けられて、メディアに乗って信用不安を煽られて、銀行他が撤退して潰れた会社ってどっかで聞いたなぁと思い出したのが、星製薬さんでした。人民は弱し 官吏は強しの諸状況からあまり変わってないなと。
そもそも、銀行間でなぜだか情報が融通されていて
「ただし一点だけお伺いしたい。銀行には顧客の承諾なしに取引情報を他に漏洩できないという厳しい守秘義務があると存じますが、この点はどうなっているのでしょうか」(P.41)
という問いには回答せずに、挙句に銀行業界全体では漫画みたいな仲間割れ
「まだみんなが熱心に議論している最中に、いったい何てことをするんだ。ADRの議論は始まったばかりだろ。それなのに更生法の手続き申請するなんて、われわれをバカにするのもほどがある」(P.115)
そういうさなかで、情報漏えいはガシガシ起こり
事実そのものの確認すら取らず、銀行と管財人側が一方的に流した意図的戦略的な情報、巨額な損害賠償請求、形だけの第三者委員会の諮問内容などを、そのまま事実のごとくセンセーショナルに報道してきた新聞、テレビ各社の報道姿勢であった。(P.206)
てなぐあいで、メディアも検証もせず踊る始末。まぁ、なじられている銀行側にはそれはそれで言い分があるんでしょうけど。ともあれ、僕ら預金者も利率と元本保証ばかり騒ぐと、こういう守備的にしか銀行もなれなくなって日本経済は停滞するんでしょうし、視聴者としてもそういう簡単な図式でしか報道を見ようとするからそういう報道になるんでしょうしね。
救いは、刑事告訴になりそうになったときの家族の、肝の据わり方ぐらいですかね。
「会社のみんなのためにやったことで罪になっても、後ろめたいことなんて何もない。堂々たるものよ。しばらくは刑務所で、しっかり男を磨いてくるんだね。わたしたちは全然平気。食費も助かるし......」(P.182)