極北ラプソディ

「ずっと、僕はそうして生きてきた。どこへ行っても、いつかはその土地を捨てる。僕が捨てた地では、僕への憎悪が溢れ、その肥沃な土壌の上に美しい花が咲き乱れる(略)僕は咲き誇る花を見ることができない。いつもそうだった。そしてたぶん、これからもずっとそうなんだろう」(P.391)

えーと、この本、極北クレイマーの続編、と見せかけて

「やれると思うから命令している。手の中のいのちを救うためなら、なんだってやるぞ」
「無理なものは無理だ」
「その台詞、言い飽きないか?」
(P.299)

と、ジェネラル・ルージュの凱旋の続編、とさらに見せかけて

「アデュウ、日本。かつてスリジエの豊穣な花を立ち枯れさせてしまった、貧しい国よ」(P.37)

ということで、スリジエセンター1991の続編という、実に手の込んだ一作です。さらにいうと、前作は実は螺鈿迷宮の続編だったと気がつくには螺鈿迷宮以外にも読まなきゃいけないという。
本作、主役は今中先生と見せかけて、実はジュノ世良先生。で、速水先生が脇を固めるという、わりと贅沢にそれぞれ本編を楽しめるサイドストーリでもあったりします。
内容はどうかって?そりゃ読んでください。オチは、まぁ、そんなのもありだよねって感じです。

「この発言で、僕がここにいられなくなったら、この街を離れるだけさ。僕は頼まれたから来ただけで、ここに愛着はない。必要とされなくなったらどこかへ流れていくさ」(P.36)

「世良先生は病んだ社会にメスを振るおうとしている。ならば俺はその手のひらからこぼれおちる命を拾い上げる。つまり、役割分担なんだ」(P.256)

俺たち意志は、気がつかないところでさまざまな善意に守られているのかも。(P.265)