前へ!―東日本大震災と戦った無名戦士たちの記録

「どうせ誰かが死なないといけないのなら、妻も彼女もいない、自分のような者が死ぬべきだ、そう思っただけです」(P.140、福島第一原発の事故対応に赴く20代自衛官)

「燃料プールの正確な位置が知りたい」と詰め寄ると、東京電力の社員は、軽く言ってのけた。
「なら、代わりに、×工業に、放水、やらせますかぁ」
(P.135)

東電は、あの311のときに、この本の取材ですべてを記述しきっている存在だったのだとしたら、即効、倒産した方がいい会社です。決して層ではない側面や本当に戦った人もいると信じたいところではあります。
あの日の異常事態を乗り切るべく文字通り奮闘した多くの方々のドキュメンタリー。あんまり、感情に物事は引きずられたくないので、こういうのは読まないようにしていたのですが、文庫になっていてこの間の3月11日の日に本屋でつい手にとってしまいました。
幸か不幸か、日本はストラテジではなく現場力で保っているのだなと。
冥福を祈るべき相手と、奮闘をたたえる相手と両方に対して、また丁寧な取材をした著者にも、敬意を表したい一冊です。

優先すべき任務は明白だ。とにかく人命救助――それに尽きる。(P.349)

任務半ばにして、交代すること許さじ。そのためのブツは持たせたはずだ!(P.423)

「他の省庁でできることは、その省庁がきちんとやるべきです。自衛隊に全てを丸投げするような光景は、国家として正常な姿ではないと思います」(P.431)

「貯金より貯人せよ」(P.458)