「昔はよかった」と言うけれど

現在の基準で考えれば、「戦前を生きた人々よりも、いまの人たちのほうがむしろ高い道徳心を身につけている」とはっきり言うことができるのです。(P.234)

なんというか、僕がこの土地に住んでから感じた違和感、市民活動センターで感じた不思議なことの数々はそういうことなんだなと。私徳はあれども公徳なし。たぶん、日本の田舎はいまだに戦前なのだな。
とはいえ、戦前に関しては衣食足りて礼節を知るという側面から考えるに、衣食が足りなかったわけで、

家の存続に直接かかわりうる「労働のしつけ」には厳しく、行儀作法など労働とは関係のない部分のしつけについては関心が薄いというのが一般的だったわけです。(P.206)

という点にはやむをえない部分もあったのだろうなと。ただ翻って、日本の田舎を見るに衣食は足りていてこの公徳心のなさは非常に悲劇的な話なわけです。この本を読んで、一度わが振りを見直してみるといい本かもしれません。
それにしても、抜書きはしなかったけど、お風呂の話とかわりと吐気がしそうな話は多々あって、現代日本に生まれてよかったと心底感じました。

家の中をきれいにする一方で、そこから出たゴミや汚物は平気で外に捨てる。公共空間が汚れてもおかまいなしです。(P.62)

日本人の道徳心は終戦(一九四五年)を境に低下しはじめたのではなく、「もともと低かった」のです。(P.12)

当時の人々は、身内や知人以外の他者に対する同情心が乏しかったという事実は否めません。(P.153)