モルフェウスの領域
「それが未来に開かれたものなら一矢を報いようなどとは思いませんが、素晴らしい技術を塩漬けにしようというマイナスの姿勢ですから、たとえ国家の意向といえども、真正面から叩き潰さなければなりません」(P.233)
海堂作品の、どのシリーズにも属していなさそうな作品。
おまけにテーマはコールドスリープという現存しない技術をテーマにしています。とはいえ、医療と司法と行政の問題を真ん中にすえた意欲作です。そして、他作品で活躍したキャラクターがまた活躍するという桜宮サーガの中の一作ではあります。
ちなみに、おお、あの作品のあの人が。って感じの驚きはなくとも独立した一作として十分楽しめます。
孤独に耐えられるのは強者だ。そして強者は往々にして、俗世からは変人扱いされる。(P.9)
自分を甘やかせば破滅する。(P.85)
「私は玉座に座り、ひとり呟き続けます。その呟きが多くの人の耳に届くかは問題ではなく、言葉を必要とするたったひとりの聴衆が聞き遂げれば、それでいいのです」(P.137)
私の人生はとっくに取り返しがつかないんじゃないの。(P.141)
「自分がどこから来てどこへ行こうとしているのかわからない人間は、いずれ影を亡くしてしまう。そうしたらソイツはゾンビと同じさ」(P.259)