中大兄皇子伝

理想を追うには現実は余りにも生臭い。現実とは既得権である。(下P.361)

大化の改新をテーマにした小説。中大兄皇子が主人公。わりと個人的には面白く読んだんだけど、これって少しは歴史の基礎知識がないとおもろくないよなぁとか思う。
そういう意味では、同じテーマを題材にした「青雲の大和」のほうが、読み物としては面白いように思う。
歴史のお勉強をするわけではないけど、解釈ひとつでこんだけ人物像は違うぞってことで、読み比べて楽しんでください。

そうなのだ、吾はありきたりの習慣に捉われることに飽き飽きしている。革命がすきなのだ。(上P.32)

それにしても吾も成長したものだと、抑制力を褒めてやりたかった。(上P.138)

大事を成すにはくだらない私情を抑えねばなりませぬ(上P.287)

地方に新しい政治を伝え、在地の郡司たちに模範を示すべき国司が、物、馬、女人を奪うとはまったく情けない話である。人間の物欲とはこんなに醜いものなのか。(上P.359)

「男子は見切りが大切です」(下P.125、鎌足)

「口から出た以上、取り返しがつきません、出てしまった言葉は二度と呑み込めないからです」(下P.128、鎌足)

「ここは堪え難いことですが憎しみをお捨て下さい、いや、捨てるというより、今に見ろ、と、実りのための肥やしになさるべきです」(下P.330、鎌足)