日米開戦の真実

政府の行為が、国民のためによかれと思って行ったことでも、結果として国民に対してうそをついてしまった場合は、後で嘘をついたという事実を明らかにすることが、国家に対する信頼をつなぎとめることになる。

その通りですね。一般論としても個別事例としても成立する大事なことです。
さて、外務省のラスプーチンと呼ばれて、わりと道産子にはなじみのある佐藤優氏の、大川周明の大東亜戦争の意義他についての解説の解説。
歴史は多角的にとらえるべき、と個人的には思っているので、こういうのはしっかりと一読して置いても損はないと思う。
特に、当時の国際情勢のさなかで

大西洋においては英米海軍の十対十比率が、なんら平和を破ることないと称しながら、太平洋においては日米海軍の七対十比率さえなおかつ平和を脅威すると力説する。(P.95)

というのは、わりと不思議だというのが分からなくもない。で、当然だけれど、

指導者と国民が物語を共有していないと総力戦は不可能だ。国家権力による強制的な動員や「鬼畜米英」などの底の浅いスローガンだけで数年にわたって継続できるほど総力戦は甘くない。(P.175)

というのは、その通りで、単純に言論封殺とかで強制で来ていたとは思えない。その上、マスコミなんて

媒体自体に思想はない。その5年前に東条首相の声で、国民に大東亜戦争の大義を説明したNHKが、今度は東条英機を日本国民を騙した大悪党であると断罪するのである。(P.157)

こんな感じでしたし。戦争の勝ち負けとか、勧善懲悪とか単純な話じゃなくて、わりと

正しき支那と蘇れる印度とが、日本と相結んで東洋の新秩序を実現するまで、いかに大なる困難があろうとも、我らは戦いぬかねばなりません。(P.300)

こんなスローガンを信じてたんだと思うんだよね。結局、戦争は負けたけど、この後ほとんどの植民地が独立し、帝国主義支配を終わらせ、新秩序を生みだす引き金になったのは確か。それに、

日ソ関係に限定すれば、「平和に対する罪」を犯したのはソ連であり、日本ではない。アメリカ、イギリスがソ連に対して対日戦に踏み切るように要請したことは、日本の立場からするならば、米英がソ連に対して中立条約を違反せよとの国際法違反を教唆したことに外ならない。そのような諸国に日本が裁かれる筋合いはない。(P.141)

というのもその通りだと思う。一つ一つ積み重ねて、ちゃんとあの時の戦争は再評価しないとダメなんだと思う。そうしないと、それこそおかしな軍国主義が台頭すると、僕は思うけどね。


「予は痛く対日策に悩まされている。加州とくに桑港の馬鹿者どもは、向こう見ずに日本人を侮辱しているが、その結果として惹起さるべき戦争に対して、国民全体が責任を負わねばならぬのだ」(P.81、ルーズベルトが息子にあてた書簡)

日本は敗戦国であるから、連合国の「教育」を拒否することはできない。しかし、それに全面的に付き合う必要はない。(P.126)

天国において奴隷たるよりは、地獄において主人たらんと豪語してきた好戦敢為の民(P.219、イギリスのこと)

「自国の善により自国の悪を克服する」(P.338)

国際政治は、性善説ではなく、性悪説に立脚した「力の論理」を冷徹に認識した上で組み立てた方が周辺世界との軋轢も少なく、結果として自国の国益を極大化するのだと思う。(P.355)

日本だけが誠実に行動しているのに、世界中からナメられ、コケにされている(P.369)