日本人の叡智

事業はみだりに興すことあるべからず。思いさだめて興すことあらばやまじの精神なかるべからず。(P.72、大槻玄沢)

事に臨んで賤丈夫となるなかれ。(P.86、緒方洪庵)

誰それは気にくはん等言ふやうな狭量なことでは仕事はできるものぢやないよ。(P.140、杉浦重剛)

うわ。さっそく、心に痛い働き方の御言葉の数々。会社を作ったけど、それはしっかりやり通さないとね。
そんなにメジャーじゃない日本史の色々な一コマを飾った燻銀ともいうべき人々の、言葉集。著者の拾い方や解説が丁寧なので、解説の中に入っている、別の言葉なんかにも非常によく惹かれます。

以下なんかは子守をしていて然りと思います。

本人は、自分に何か向いたものがあると信じて探すこと。周囲は人を型にはめず才能の発見につとめること。この二つが先行き不安な人間を光に導くものらしい。(P.69、縞保己一の解説)

親や先生が面白くないものを、子どもが面白がるはずはない(P.85、佐藤一斎の解説)

働く立場としては、以下なんかは大事なことだ。

「茶碗が割れたのより、おまえが苦悩するほうが、わしには困る」(P.63、徳川治保、家臣が茶碗を割って)

仕事の報酬は仕事である。(P.189、藤原銀次郎、愉快に働く法十ヵ条の10)

「人を世話するなら徹底的に気持ち良くしなくては駄目。飼い犬に手を噛まれたなどと泣きごとを言うくらいなら初めから世話せぬがよい」(P.177、小平浪平)

戦争という視点に置いても、以下は至言。

<現在全盛の海軍は無用の古物となつて空軍万能の時節ともなりましょう>(P.129、秋山真之)

<戦争の為に、百億の予算を組む国家と、教育の為に、百億の予算を組む国家と、いずれが将来性があるかは問わずして明である>(P.165、桐生悠々)

「僕ぐらい県民の力になれなかった県知事はいない。多くの県民をしなせた責めを負う」(P.171、島田叡)

「軍縮のような大問題は犠牲なしには決まりません。だれか犠牲者がなければならん。自分がその犠牲になるつもりでやったのですから、私が海軍の要職から退けられ、今日の境遇になったことは少しも怪しむべきではありません」(P.194、山梨勝之進)

以下のように生きれれば概ね幸せかな。そういう意識を持って、明日から過ごそう。

万事を決断するに、仁愛を本として分別すれば、万一、当たらざることありとも遠からず。(P.18、小早川隆景)

出る月を待つべし。散る花を追うことなかれ。(P.40、中根東里)

「事が発生した時、苦心焦慮、心を配ることは大切だが、自分の身体が衰弱するほど心を痛めることは愚なることである」(P.153、馬越恭平)

私の体験によれば、人生の最大幸福は家庭生活の円満と職業の道楽化にある。(P.180、本田静六)