ウェブ進化論
「アイデアの起案自身というのはほとんど評価されない。アイデアっていうのは当然、難しい問題を含むものだ。その問題を解決して、動く形にして初めて評価される。口だけの人はダメだな」(P.87)
世の中そういうもんで。口に出した程度で、権利だのなんだの主張されても困るわけで。そんなんなら今頃僕でも億万長者の様な気がする。ま、でも、形にできないなら
「自分がお金に変換できない情報やアイデアは、溜め込むよりも無料で放出することで(無形の)大きな利益を得られる」(P.164)
という考えでいればいいのです。今さらの読書ですが、何と初読です。業界人失格ですね。割と今読んでも面白く読めます。例えば
情報革命は、筋肉もエネルギーも供給しない。供給するのは神経系である。(P.45)
なんかは、全くその通りで、おまけにバイオベンチャーなんかでも結構そうで、いわゆる知財系ベンチャーの共通の表れなのかもしれません。あと、やっぱりそうか、思ったのが
「世界政府ってものが仮にあるとして、そこで開発しなければならないはずのシステムは全部グーグルで作ろう。それがグーグル開発陣のミッションなんだよね」(P.14)
のくだり。ずっと僕もこれ言い続けていたので、確証が一つ取れた感じです。あと、
「ロングテールに関わりあっても固定費を賄えるだけの売り上げを生まない」というこれまでの常識は、リアル大組織においては今も正しい。(P.111)
も、そうで、ロングテールが寄り集まっても、アメリカには一生軍事力では勝てないのです。(実は軍事予算の金額もべき乗則)
ともかく、成る程、皆さんが一度は話題にする本だけのことはあります。現代社会を読み解くのに、是非ご一読を。
「夫婦共働き(ダブルインカム)」に代わって、「リアルで共働きは当たり前、それに加えて夫婦それぞれの分身がネット上で稼ぐクアドラプル(四カ所からの)インカムで、家計のポートフォリオを組む」時代がやってくるかもしれない。(P.36)
誰かに発注すればいいものをゼロから自分で作る意味は何か。突き詰めていくとそれは、圧倒的なコスト優位の実現である。(P.67)
「凄く頭のいい優秀な連中というのは皆、自分で管理できるのだ」(P.82)
「オープンソース」はソフトウェア世界を超え、世の中全体に応用できる考え方ではないのかと思わせるだけの、不思議な魅力を秘めていたのだ。(P.175)
「ITとネットの進化によって将棋の世界に起きた最大の変化は、将棋が強くなるための高速道路が一気に敷かれたということです。でも高速道路を走り抜けた先では大渋滞が起きています」(P.210、羽生氏)