昭和の名将と愚将

「甲乙選びがたいときは、より危険性があっても積極策をとる」(P.75、山口多聞のスローガン)

こういう人は好きです。ミッドウェーで最後の最後に残った飛龍で指揮をして一矢報いた人として有名。死んじゃったらだめでしょう。とか思う。現代人の倫理観に毒されてるだけかも知らんけど。
銀河英雄伝説という本の中の名言で「本来、名将と愚将の間に道義上の優劣はない。」というのがある。そりゃそうなんだけどさ、でも、ミッションを設定し完遂する能力の差は、如何ともしがたいわけです。
愚劣きわまる作戦で世界の戦史に燦然と輝くであろうインパール作戦で、愚将が

「インパール作戦での日本軍兵士の第一の敵は軍司令官、第二は雨期とマラリアの蚊、第三は飢餓、そして英印軍はやっと四番目だ」(P.200、生存兵士の言葉)

という危機的状態の友軍を陥れた中でも、

「どうせなら、寡兵で、包囲されながら持ちこたえて世界記録を作ろう」(P.134、宮崎繁三郎、インパール作戦で)」

と、少しでも多くの友軍を守り帰還させた名将もいるのが戦場。名将の上司が愚将じゃ戦争全体はどうしょうも無い。開戦に突っ走るわ

南部仏印心中はやりたくない、という陸軍を、無理やり押しきったのは海軍の第一委員会(P.225)

特攻はちょっとうまくいったからって常設攻撃にするわ。

ところが思いのほかうまくいってしまった。わずか十数機で航空母艦一隻を沈めてしまった(P.243)

でも、忘れちゃいけないこともある。そのミッションを作ったのは世論だったり国民だったりする。昔より今のほうが、民主主義なんだからその責務は大きい。

国連脱退は言ってしまえば新聞が推進した。実に全国百三十二社の新聞が政府の決断より先に「脱退せよ」と尻を叩いている。(P.20)

将の前に国ありき。国の政治が、政治を決する民衆が目を曇らせてはいけない。名将、愚将と評論するのは良いけど、まずはそこなんだと思う。

「君たちは死ぬ必要はない。みんな死んだら誰が国を再建するんだ」(P.117、小沢治三郎)

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