撤退の本質

会社の経営にとっても、国家間の戦争の場合でも、常に素直な目で真実を追究し、正しい判断が必要です。(P.125)

もののけ姫の「曇りなき眼で」ってシーンがあったけど、あれだね。
物事始めるのは簡単だけど、止めるのは実は大変って奴です。止めるのはいつでも止めれるってよくいうけど、そういっている時点で、止めれていない訳です。
日本における比類なき撤退の成功例ってのは、やっぱり日露戦争で

「戦争(武力戦)とは、他の異なる手段をも交えて行う政治的交渉の継続である」というクラウゼヴィッツの命題を骨身に沁みて思い知らされたのでした。(P.74、三国干渉で)

日清戦争の反省もあって、現場は

「今後の戦略と政策と一致せんと欲するを以って、敢えて閣下の高見を仰ぐ」(P.86、奉天会戦の後、満州軍司令官大山巌が参謀本部へした打電)

政戦の一体を訴え、終戦をしっかり行うことが出来たわけです。と同時に

「我が陸軍の戦後に於ける経営を企画するに方り、最も戒心すべきは戦勝の予光に駆られ、国家の大計を顧慮せず、国力不相応の軍費を要求して急激に拡大の軍備を拡張と欲し」(P.95)

と憂いたら的中。挙句に

付与された任務が気に入らないと発言することは、軍人にあるまじき言語道断の軍記紊乱と指弾されなければなりません。(P.189、上海保護では物足りないと発言し、南京突入した松井大将)

こんな暴走まで生むわけです。他方で、戦術レベルではキスカ島の撤退などの比類なき撤退も。

これらの撤退作戦そのものは戦史的に回顧しますと、かつて他に類例を見ない無欠かつ完璧で見事な戦術的成功を収めたものでした。(P.288,キスカとガダルカナル)

「本作戦は第一水雷戦隊司令官に一任するが、もとよりわが第五艦隊の作戦であるから、私も十分責任を持つし、また使用兵力などで第一水雷戦隊の要望があれば、私の出来ることならどんな世話でもするし命令も出すから、申し出てもらいたい」(P.298、河瀬長官が木村司令官へ)

とはいえ、戦術レベルは戦略レベルや政略レベルは超えないわけで、撤退をするにも

我が国は明確なる「国家理念」、「国家目的」を確立し、明示することができなかったために、結果として地球規模の国際情勢の推移の中で日本が置かれた戦略的な立脚点を客観的に判断する能力を失っていました。(P.44)

こういうことが必要で、果たして今の日本に、この反省は生きているのでしょうか。政府だけではなく企業経営においてもです。
と、他人事にしてもいけなくて自分も自分の撤退時を見誤らないように、曇りなき眼で自体を見るようにしましょう。

人間は得意なことで失敗するといわれています。(P.50)

松下興産の負債は7000億円以上に膨れ上がり松下電器、銀行、松下家が金融支援しましたが焼け石に水の状態でした。(P.109)

信長は、総大将として最後の瞬間まで生き残る努力を続けることを最も重視して実行したのでした。(P.151)

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