わが上司 後藤田正晴
無責任のチェイン・リアクションの鎖の輪の一つが、"国益"でも"公共の福祉"でも"社会正義"でもなんでもいい、少なくとも私利、私欲、私益にかかわりのない公憤、破邪顕正の決断を下し、速やかに行動を起こす政治家がいさえすれば被害局限、名誉回復は可能なのだ。(P.333)
国家というほど壮大ではありませんが、いま、自分の手元にある公共施設はそういう経緯でできています。「私利、私欲、私益にかかわりのない公憤、破邪顕正の決断を下し、速やかに行動を起こす」地方政治家が今すぐ出てきて欲しいです。そんな輩が出てこないから、僕がピーチクパーチク騒いで、スタッフと一緒に相互に意思決定から漏れた人々の思いを組んでアクションを丁寧に作り直すという、本来の指定管理業務外の業務をする羽目になっているんですけど。
ま、その辺はさておき、日本電算機なるところでたくさんの政治家講演中継の仕事をやらせて頂いたのですが、その中で、もっとも感銘を受けたのだこの後藤田氏。自分の家族的には中曽根とタッグで国鉄民営化を進めた人でもあるので、敵でしかないのではありますが、あの苦労の意義をしっかりと語ってくれて、苦労した人への尊敬をしっかり持っている人でした。
で、どんな人だか知りたくて買って読んでみた一冊です。佐々氏の自伝的要素が強い本でしたが、人となりは少し知れたかなと思います。
「そんなことしてると、一万三千人の人命が危ない。よし、内閣でやろう。協定もへったくれもない。安保室長、君、やれ」(P.243、三宅島の危機で、ちんたら縦割り調整会議している現状に対して)
「わしが五十年間生き残ったのは、再び日本を軍国主義にしないためじゃ」(P.286、1%枠の突破に対して)
「君はこれから、口を慎むこと。でしゃばらぬこと。喧嘩をせず、横や下と仲良くすること。これを心得ておけ」(P.139、佐々氏に後藤田氏が官房に就任する際)
こんな感じの信念と国民と国家への思いと、上司としての振舞いがある一方で、
「そうか、それじゃあな、その五訓、いうの、ちゃんと紙に書いてきてもらってくれ。それ見て色紙書くから」(P.152、後藤田五訓の揮毫を求められ、自分の言った事を忘れて佐々氏に)
「なんで、すぐにワシにいわなんだ、ワシは知らなんだ。ワシはひとでなしになってしもうとこやったないか。すぐ帰れ、かまわんで行って下さい」(P.290、佐々氏が岳父の死を押しての対応に対し)
茶目っ気やら人間性のある人だったんだなと。
僕もこんな一言を言ってくれる上司と仕事をしていたら違った人生だったんだろうな。
「国益のためだ、君、ちょっといってな」(P.464)
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