のぼうの城

「武ある者が武なき者を足蹴にし、才ある者が才なき者の鼻面をいいように引き回す。これが人の世か。ならばわしはいやじゃ。わしだけはいやじゃ」(上P.185)

個人的には、各界で高く評価されている内容もさることながら、小田原攻めの枝城の篭城戦を描くというある意味マニアックな設定だけでかなり惹かれるものはありました。
で、読んだ感想は、あー、あの方は、のぼう様みたいだ。取引先さまは一つぐらいはあるもので、私もどなたとは申し上げませんが、ありゃそうか、のぼう様だったのか。理解がとっても深まりました。
でも、ああいう人って必要だよね。平和な世の中なんだから、ああいうひとを余裕を持って飼っていた方がいいんだなと。くそまじめに、ばかくさい原則論を振りかざすところと、何でも飲みこむくせに変に意固地なところを。

「北条家にも関白にもつかず、今と同じように皆暮らすということはできんかな」(上P.71)

「隠せばうわさは広がる。洗いざらい話せばみんなわかってくれる」(上P.116)

それにしてもそういう人間って、外野から見ると本当に判別が困る。毎日そんな気分です。あなたのまわりにもそんな「のぼう様」が一人ぐらいいませんか?

「でくの坊と呼ばれ平然としている男か」
吉継は、深刻な顔でつぶやいた。
「果して賢か愚か」
(下P.73)


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