新編 銀河鉄道の夜
ベタに名著、名作の読み直し。
新潮文庫なんだけど、この新編ってのが結構曲者。というのは、その昔、新編じゃないほうを持っていてボロボロになるまでよんで、この新編を買ったら、なんと収録作品が違うんですね。
増えているのではなく、本当に変更。ちなみに、旧編の賢治作品は「風の又三郎」と「銀河鉄道の夜」の2冊でリリースされていて、「注文の多い料理店」がリリースされたときに、旧編とあわせて大幅に賢治作品の組み合わせを変えてくれたため、結局3冊の買い替えを余儀なくされました。
読み返してみると、やっぱり名著名作ってのは感動があるもので、加えて解釈の視線も変わっているので「あれ、こんな作品だっけ?」という感じになったものも少なくありません。
あと、結構時系列で作品が収録されているので、賢治の見る社会というものへの像が変わっていっているんだなぁという感覚も感じられます。実は今回の新編銀河鉄道の夜の収録作品に共通なのは、社会とうまくかかわれない主人公というのが一つのテーマなのかなと。
そう思うと「よだかの星」のように最後の最後は救われないような話が多いはじめ方の収録作品から、「オツベルと象」のように最後はそれとなく救出されるものへ、そして「セロ弾きのゴーシュ」のように、社会に成功者として受容されるお話へと、救われない社会像から、努力が報われる社会像へと童話の内容が変わっていっているのは、賢治の生活状態が反映しているから、という味方は穿った見方だろうか。
#ちなみに、最後の2作品は時系列どおりではない。
そんなことを読み取ることをしなくとも、ただ手にとり読めば、そのヒトのその時代に必要な解釈と感動が得られるというのが、賢治の童話の最大の魅力。この新編、文句は書いたもののなかなか良い作品のチョイスです。忙しい人もちょっと時間を作って読んでもらい一冊です。