ONE to ONEマーケティング―顧客リレーションシップ戦略

皮肉にも、市場シェアに重点を置いても、顧客シェアに重点を置いても、最終目的は売り上げと利益の拡大である。(P.26)

結局、この部分を相克しない限り、人にとって、企業の活動は邪魔者でしかなくなる。すなわち、どこまでいっても自社の利益のための「おためごかし」に過ぎないのなら、それは自己選択で売買物を選べた、マスマーケティング時代以上の悪い時代の到来である。その上、それが商活動の領域に収まっていればまだいい。

「自分だけ」のニュースのなかで、関心がない、あるいは触れたくない話題から眼を反らし続けると、それらの問題はそれほど気にかからなくなる。そして、そのうち問題の存在すら忘れてしまうようになる。(P.280)

のような事態にまで進めば、社会性こそが人類の基盤と考えたときに、恐ろしい未来でしかない。が、現実問題として、そのレベルにまでこの手法を洗練して導入しきれていないという、現実がある。で、彼のいう手法の根本は

ワン・トゥ・ワン・マーケティングは、昔からあるリレーションシップ・マーケティングが洗練されたものに過ぎない。(P.ii)
ビジネスの究極の目標は、顧客シェアの獲得なのである。(P.19)

というところにある。このための手段として、個別対応というのが出てくる。が、この手法の最もみそになるのは、既存顧客を判別し、よき顧客のさらによいサービスを提供することなのだ。

結局、苦情処理というのは、ワン・トゥ・ワン活動の一つなのである。(P.68)
フリークエント・フライヤー・プログラムは、最も価値のある顧客とそうでない顧客を差別化する手段にほかならない。(P.79)
努力に値する顧客を一人一人明確にし、その顧客に対して適切な労力を注ぎ、(略)一人一人の顧客とのリレーションシップを深めておくことなのである。(P.116)

FFP(FSP)というのは、案外と勘違いされているが、会員になれば良いサービスが受けれるということを示して、新規顧客を獲得する手法ではない。あくまでも、基本は基本顧客の判別のプログラムに過ぎない。新規顧客はそもそもどうでも良いのだ。そういう勘違いが

対話とは、何百万通ものメールを送り、送った相手の何%かと取引を行うことによって成り立つものではない。(P.152)

こういうスパム社会を生んでくれる。また、この手法のパンドラの箱に耐えれない企業も多い。

苦情は常に存在していたが、直接マーケターに聞こえなかっただけなのである。(P.181)

まぁ、企業だけでなく行政なんかもよくある。こうした、混乱もさることながら

顧客や見込み客は、それぞれ独自の態度や意見をもち、生命をもった知的な一個人なのである。(P.150)

ということを信じて、仮に、ワントゥワンな未来になっても人は的確な判断で、それを超えた存在でい続けることを祈念しましょう。

うっぱらいたいけど、重要な基礎文献なので保存。