クライシス・マーケティング―あなたの会社を危機から救う12の法則
信用、信頼。それこそがビジネス成功の第一歩。どの経営者もそう信じているはずです(P.10)
この一文から始まる本書は、企業の危機管理の本。コンプライアンスやCSRという言葉になれた今の人々には珍しくない概念かもしれない。が、この本は原著が1997年。訳書が1998年11月の出版。なんと、10年以上も前の本なのだ。
改めて読み返してみると、これだけ世にコンプライアンスやCSRの本があふれ、国内において優れた失敗事例の数々があふれている今読んでみても、十分新鮮で、読み応えのある良書だ。
本書の主張は首尾一貫している。
従業員を搾取し環境を汚染しておきながら、地元のオペラ会社に寄付をする会社が、社会的責任を全うしているとは到底いいがたい(P.114)
何を希望し期待しているのか、ありのままに話せば、この世から苦情や訴訟は激減するのですが(P.118:広告主は嘘をつくということについて)
自分が正しいことをしていると信じているのなら、口にするのではなく行動で示してください(P.180)
などなど。
要は企業の最大の危機管理は誠意ある企業市民たることを日常的にきちんと行い続けることの重要性に他ならないのだ。大切なのは危機管理マニュアルでも、訴訟費用でも、被害者救済の基金を十分に積むことでもないのだ。あらかじめ信頼の貯金をどれだけ積み重ねるかに他ならない。そのような行動をとっている企業であれば、いざというときに恥ずかしい対応はまずしないだろうし、その原因も恥ずかしくない理由で起こっていることだろう。
正直、テクニカルに事態の解決の手法ばかり語る多くのCSRやコンプライアンスの本のいかに浅はかなことかと、実感できる。十分読み継がれる価値のある一冊。社会人であれば平社員も経営者も独立事業主もぜひ一読を。