現代童話〈1〉

そして、帰りにはきっと僕のところにやってきて、かみきり虫をさがすのだ。そして、見つけしだいに、力いっぱい土にたたきつけて殺していくのである。(P.241:あるハンノキの話)

非常に切ない一編だった。この「ハンノキの話」は、ある少女の原爆の後遺症の話をあるマンションのそばに立っていた大きなハンノキの視点で語ったもの。このカミキリムシを殺す少年の姿が、胸を打つ。原爆の悲惨さをこれでもかってリアルに語るのも大事かもしれないが、こうしたちょっとした出来事のほうが、子供にことの本質や悲しさがすっと伝わるのかもしれない。

こうした、絵本、童話、童謡、子供に関するエッセイ、小説など後半に集めたアンソロジーである。読んでいる感じとしては、小学校一年生から中学校三年生向けぐらいの順番で並んでいる一冊である。とはいえ、このいい年した大人が読んでも、結構ぐっと来る。

にんげん、やさしささえあれば、やらなきゃならねぇことは、キッとやるもんだ。それを見て他人がびっくらするわけよ。ハハハ(P.67:モチモチの木、爺さまの言葉)

わたしは、「負けた」とおもいました。わたしの童話なんか、この美しい光景や、浜さんの夢にくらべたら、たわいのないもにおもえたからです。(P.172:焼けあとの白鳥)

海の青さに感動したものは、海について科学する資格を有する。花を美しいと感じたものは、花を科学する権利を持つ。(P.353:海の歌・科学的感心と美意識)

あえて、解説は書かない。是非、手にとって読んでもらいたい一冊だ。自分の書棚に残したいが、同時に自分の子供にこそ手にとってもらいたい一冊でもあるので、子供の書棚に残そうと思う。