永遠の0

「自分は、この飛行機を作った人を恨みたい」(P.241)

毎年この時期になってしまうと、ついついこの手の本に手が伸びてしまいます。仕事の待ち時間をつぶそうと本屋に入って色々物色したのですが、結局コレを買ってしまいました。
0(ゼロ)はいわゆるゼロ戦といわれた零式艦上戦闘機のこと。日本の技術の粋を集めて作られたこの戦闘機の末路と、本編の主人公の祖父の末路を書いた小説を通じて、日米戦争はどういうものだったのか、この本の主題に有る特攻と言われるものはどういうものだったのかを、丁寧に解説した本。と言うのが、僕の本書に対する評価。
小説としてのどんでん返しを評価しろと、書評にも解説にも書いてあるんだけど、正直言って、このどんでん返しは、僕としては涙に値しない。純粋に泣けない本。やはり生き抜いて次世代を自らの手で守り抜いてこそ、主人公のポリシーが明快に出たのではないかと思う。
ただ、戦争の解説としては非常に丁寧で、僕自身は小中学生の頃にこの時代の軍記物を飽きるほど読んだので、目新しさはないけど、言われてみれば相当マニアックに調べないとこういうことは分からないだろうから、それをこの一冊で概観できるのは価値があると思う。
太平洋戦争ってどういうものだったんだろう、ということを考えるのにはいい小説といえるかも。

「お前が特攻で死んだところで、戦局は変わらない。しかし――お前が死ねば、お前の妻の人生は大きく変わる」(P.354)