智場 #111 人のつながり −理論,社会,インターネット

「人々は2年後のことを予測しすぎ,10年後のことを予測しなすぎる」(P.88、ビル・ゲイツの言)

友人知人が参加している書籍。というか、貰ったんだよね。宇治で再会したときに。基本的に、人のつながり論に関しては、僕もそこそこうるさいので、コラムで書いていますが、つながりの本質を考えれば、

さまざまなネットコミュニティを見ていると,ITのレベルが高い人というより,現実社会の集団行動をプロデュースする力のある人をメンバーに加えているグループがうまくいっているように見えます.(P.37)

こんなのは当たり前なんだけれど、デジタルなネットワークで見ていると

リンクの質は考えたいですね.よく強い紐帯,弱い紐帯ということが言われます.(P.25)

というように、質が見難くなっているのは確か。対面だと毎回そのつながりの質ってのはよく分かるんだけどね。しかも、そのつながりの質とか構造が固定的で単一層であってはいけないのは確かで、

18世紀の日本の社会には,いわゆる政治的な意味での市民社会はなかったけれど,自分の生まれはとりあえず置いておいて,まったく違う身分の人の中に入っていける遊びの場や祭りの場がたくさんあった.(P.33)

こういう柔軟な質が必要で、その層間の入れ替えに有効なのが匿名というか号というかペンネームというか、そういうもの。だから

匿名性によってどのような「つながり」を築いていきたいのか.実名vs.匿名という論争を超えて,用途や目的に応じた匿名性の設計を考えるべきであろう.(P.72)

と言うのは重要ではある。特にデジタルネットワークはそうした層の切り替えに、新しい有効性を示しつつあるので、様々な研究素材として面白いんだろうな。