智場 #111 人のつながり -理論,社会,インターネット

何か実体的な自分のアイデンティティというものがあるというより、人とのつながりのなかでその瞬間に立ちのぼってくるものが、そのときのアイデンティティだと。(P.31、池上氏)

これはまさにそうで、人間の値付けの行動と、そのおかれた立場(=その瞬間の人のつながりの構造)に相関があるという未発表の論考を書いたのですが、結局価値であれ何であれ、意外と固定的な自分なんてものはありそうでないものだと思った方が分かりいいです。
ただ、多く時間を占有する生活の側面が大きくなって

今は身分制度こそないですが、いったん企業社会の中に入ってしまうと、企業の論理で大部分が決まってしまうということがあるのではないでしょうか。(P.34、池上氏)

となるのではないかと。

さて、本書はGLOCOMの機関誌の111号。割と読みごたえがあります。繋がりとかをテーマにしていますが、311よりはるか前の発行。
このネットワークの分析が色々なことをひっぺがえします。

投資家によって媒介された企業間ネットワークに関する分析からは、まずハブとなるVCやエンジェルが存在していないことがわかった。(P.44、湯川氏)

なんて、なかなか痛烈な批判ですし、成果主義なども

賞与が2倍になったマネージャーが、誰にも言えず罪悪感を持ち、次年度から申請が皆無となったという事例がある。(P.91)

こんな事態に。割と今あたっているのは

当面はSNSとしてすごいと思われるものはなかなか出てこないが、逆にたとえば友達とリンクするというような機能は普通になっていくだろう。(P.61)

で、庄司望さんが講演で「Social Everywhere」と言い放ったことと同等のことを、こんな前から行っている人がいたのですね。
ともあれ、ICT時代のつながりを論考したい人は是非ご一読を。

モデルで未来を予測などということはできません。(P.21、井庭氏)