カルピスの夏

今日から、家内も子どもたちもちゃんと夏休み。で、怠惰な朝だったわけだが、朝食までのつなぎってことで、新穂高ロープウエーで買ってきた、コケモモジュースとカルピスと氷と水で、コケモモカルピスを家内が作って、子供らに飲ませている。
ホットカルピスだとかも一時期流行ったけど、やっぱり、暑い日に良く冷えたカルピスは美味しい。子供も結構ニコニコして飲んでる。僕の子どもの頃は、氷って貴重品だったのか、水に氷入れないで飲んでいたけど、カルピスだけは別。ちゃんと氷が入っていて、本当につめたい飲み物だった。作るのに氷を入れたほうが簡単だったってのもあるんだろうけど。

で、まぁ、本題はカルピスの宣伝ではなく、カルピスの思い出って話。
自分の子どもの頃って、物食いの悪い子供だったようで、いっつもノロノロ飯食ってたんだよね。夏はなおさら。特に、汁っ気のないモソモソした食い物がきらいで、何時までも口の中に入れて噛んでた。で、永久に飲み込めない。味噌汁とかで一生懸命飲み込むんだけど、それにも限度ってものがある。なので、いっつも母親に怒られていた。特に、うちの家庭は食を残すと怒られ、食で遊ぶと家を追い出されるというスパルタだった。
小学校に入るちょっと前くらいかな。ある暑い夏の日に、やっぱりそうしてモタモタ食事をしていたわけだ。兄貴はもう食事を終わって遊んでるし、父はゆっくり新聞読んだりニュース見たりしてるし、祖母は横になってるし。で、僕一人でモソモソ食っているわけだ。母は片付けもあるせいか、少し怖い雰囲気。
そのとき、何だか食事をして泣けてきた。泣きながら食っていたわけだ。口の中の何だか分らないモソモソと格闘しているんだけど、嚥下できない。もう飲むべき液体もない。べそをかいて、延々と噛んでいた。
そこで、取っ手付のブリキのコップに「はい。水」と少し怒って母が、僕に飲み物を持ってきてくれた。そっとのぞくと、白濁液に氷が浮かんでいる。水ではない。牛乳とは違う。そう、カルピスを持ってきてくれたのだ。母親を見ると、母親が口に指を当てて「しっ」ってやってる。きっと兄が不公平だってごねるかもという配慮だったのだろう。

実は、このモソモソがなんだったのかはまったく覚えていない。こうした食卓教育の賜物でいまや好き嫌いはあっても、何でも嫌がらず食うようになったせいだろう。
でも、このときのカルピスの味と、母の表情は良く覚えている。自分もいまや人の親になって好き嫌いの激しい変な子供を二人育てている。僕もその頃の母のように食べさせるのに色々四苦八苦するものの、アレルギーでもない限りにおいては何でも頑張って食べさせようとしている。カルピスの味はともかく、泣きながら食べる子供に、その子にとって最もご馳走であったカルピスを出そうという心は持っていたい。それが、またこいつらの子供に伝わりますように。