おいしい駅弁
この間東京出張の帰りに、新幹線で駅弁でも食おうかとうろうろしていた。
東京でのお気に入りは、深川飯。穴子もいいし、付け合せが地味においしい。
で、ふと目をやると、「井泉のカツサンド」という看板が。実は、私はこれが世界一うまい駅弁だとか思っている。地元に帰れば、別に汽車旅ではなくても弁当が必要なら、花見だろうがちょっとした集まりに必要な惣菜代わりだろうがこれを普通に買う。
ちなみに、初めて食べたのは、小学生の夏。理由は忘れたけど、国鉄マンの父が、旭川から小樽まで連れて行ってくれたことがある。多分、祖母は入院していて、母は兄の付き添いでバスケの試合に行っていたのではないかと思う。
小学校のときに父と一緒に何かをした記憶というのはほとんど無い。一日中家にいなくて、たまにいたら夜勤とのローテーションの切り替わりで、寝ているばかり。それでも、夏になると、時々、駅の明かりに寄ってきたクワガタを捕まえて菓子の箱とかに入れて持ってきてくれたことは良く覚えている。これも、職場の延長線といえばそれまで。母の口癖は「健さん(父のこと)は駅と結婚した人」。
そんな父なので、小さい頃の旅行の記憶はおろか一緒に遊んだ記憶などさらさら無いわけだが、どういうことか、この日は父が一緒にいた。なんだか分からないがすごくワクワクした記憶がある。
この小旅行のときに、父が駅の売店で、「これがうまいんだ」と、無造作に買ったのが「井泉のカツサンド」だったわけだ。地元じゃちょっとリッチなカツ屋さんのカツサンドなわけだ。今思えば、鈍行か急行の旅行だったわけで、かなりの長時間、列車に揺られていたはずである。小さな子供には十分に苦痛だったことは想像に難くない。でも、列車の中で食べたこのカツサンドはこの上なく旨かったことを覚えている。あと、やたらとポイントの切り替えがたくさんある札幌駅もそれとなく覚えている。ここで下車しなかったので、きっと直通か、すぐに乗換えがあったのだろう。
なので、意外なことに、せっかくの小樽の水族館の記憶はほとんど無い。帰りはどうしたのだろう。その辺の記憶は相当怪しい。
そのせいか、上の子はよく電車であちこち連れて行った。上の子にとって、父親との旅行の思い出は何になるのかな。大きくなったら聞いてみたいものである。
余談ではあるが、前出の東京駅の井泉のカツサンドは、東京本店のもの旭川のはその暖簾分け。味はやっぱり子供の頃の記憶の勝ちではある。